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統合失調症とは

2008-09-01(月) 01:07 | 長沼睦雄

 統合失調症についてこれまでたくさんの本や資料を読んできましたが、最近の私が統合失調症の理解に役立ったのは、森山公夫先生が書かれた「統合失調症 精神分裂病を解く」(ちくま新書、2002)でした。

 森山は、統合失調症を迫害妄想を軸に見直し、それが決して「了解不能の脳の病」ではなく、深い人間学的な意味を持ち、人間存在の根底に突き当たる病気であると主張しています。

 迫害妄想は統合失調症の70~80%に認められ、妄想だけの段階から、幻聴が加わり、さらに「つつぬけ・させられ体験」へと変形していって、ついには夢幻様体験へつながる発展過程を示すのだと言います。

 森山は統合失調症を、あえて「妄想」の視点から、相互に移行しあう3型(理念型)に分類しています。すなわち、「迫害妄想型」(抑うつ的方向を主とする)②「支配妄想型」(躁的興奮を主とする)③「迫害・支配妄想型」(両極を主とする)です。

 発病は、一般に、長い準備期間を持ちますが、そこから徐々に進む場合、突然(急性に)進む場合、亜急性に進む場合などさまざまであり、経過も、一回でよくなる場合、数回の発病を経てよくなる場合、長期間慢性に経過する場合とさまざまです。

 周囲とうまくいかない、なじめないなどの「絶対的な孤独」の中で人の心は閉ざされ共同生活が失われていきます。やがて、「不眠」がはじまり、24時間リズムが障害され、「共通感覚」の崩壊が促進され、孤立という「苦悩」が精神の「病い」へと転化します。

 森山は、気分障害があらゆる精神疾患の根底に存在すると考えています。「被害妄想」が気分障害(そうやうつ)を根底に持つのと同様に、「そううつ病」もまた了解の問題(固定観念や妄想)をもち、個人の資質や発病状況のあり方により、気分の失調・了解の失調・欲動の失調のいずれかが前景化するかで、病気のタイプが異なってくるだけであり、精神疾患とは一つであり、型の違いがあるだけだとしています(=汎精神疾患論)

 強迫症と統合失調症の関係も3つの場合があり、①強迫症状を呈しながら分裂病に移行する場合、②分裂病の発症後に強迫症状を呈する場合、③分裂病の病態に強迫性の外観を呈する場合です。森山は、強迫症と恐怖症は相補的関係にあり、強迫症はさまざまな疾患に出現し、単独でも出現すし、軽症・中等症・重症の視点が導入され、その成因はBio-psycho-socialなものであるとしています。

 対人/社会恐怖には3つの段階あり、①純粋に恐怖症段階の軽症例、②関係妄想性を帯びる重症定型例、③前精神分裂病症状としての例であり、恐怖症にも4つの段階あり、①人見知り(前段階)→②赤面恐怖(軽症)→③表情恐怖(中等症)→④視線恐怖(重症)と進展します。前段階は次の症状の裏に潜在すると言います。

 典型例としては、社会的疎外と孤立が進むなかで、「赤面恐怖」→「表情恐怖」→「視線恐怖」という対人恐怖の三段階を経ながら、身体はいつも疲れてだるく、生活リズムを喪失して自律神経失調を来たし、抑うつ気分が覆うようになり、「疎外感・生活リズムの乱れ・易疲労感」と「心気的状態・軽うつ状態」との悪循環が生まれてくるのです。

 重症対人恐怖の被害関係念慮のきわみで迫害妄想が始まり、「行く先々で皆が自分を疎んじ、ジロジロ白い目で見るし、ひそひそ悪口を言う」という状況依存的な妄想様状態から、「組織が自分を狙っている」という(真性)妄想へと移行していきます。

 多くの場合、はじめ妄想だけが出現する段階(パラノイア段階)があり、次いでこれに幻声が加わり、最後に「つつぬけ・させられ体験」にいたります。

 この「社会的断絶」と「組織の出現」の段階では、気分障害がより深まり(焦燥性うつ状態)、熟眠障害レベルの不眠から一睡もできない不眠(断続的睡眠)へと不眠の質が変わります。妄想成立には、常に情動変動がともない、知的障害も気分障害も同時的な現象だと言います。広い意味での迫害妄想は、「抑うつを主調とする躁うつ混合状態」のようです。

 妄想だけが出現するパラノイア段階において、状況が改善せず孤立化がますます深刻になると、そのさなかで幻聴(幻覚)が出現するのが典型的ですが、妄想と幻聴が同時に現われることもあるようです。

 妄想の第一段階(パラノイア段階)では意識の減弱度は軽度であり、(抑うつ的な)熟眠障害では注意集中困難が、(躁的な)早朝覚醒では意識の拡散が認められます。第二段階(幻覚・妄想段階)では断続的睡眠ないし未明覚醒が特徴で半眠・半覚醒の状態になります。第三段階(夢幻様段階)では、完全不眠が現われ、意識の減弱度は高度になり、日中意識は錯乱ないし朦朧などの夢幻様状態として現われてきます。

 幻声は、自分の悪口を言い、時に褒めたり批評したりしながら「圧倒する力」で襲ってきます。聞こえてくる幻声は、個人ではなく「組織」とその権力を背景にしているという特徴があります。

 それは、肉声性を失い、「頭の中」など内部空間で抽象的な「意味」として直接響いてきて、「以心伝心」の世界です。「外部」から意味が直接、心だけではなく身体にも圧倒的な力で働きかけてきて(作為=させられ体験)、患者の「内部」、内奥の秘密が、直接「組織」に漏れ、つつぬけになってしまいます(つつぬけ体験)。