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アダルト・チルドレン

2008-05-06(火) 01:35 | 長沼睦雄

アダルト・チルドレン(AC)はもともとアルコール依存症の親のいる家庭で育った子どもを意味していたようだが、今は機能不全家族で育った子どもの意味にまで広がって使われています。

心理学用語なので医学的診断名には登場しなませんが、心の病む人たちの状態像を把握するのに便利であり欠かせません。もちろん発達障がい診療においてもです。

家族は本来、子どもに安心感を育むものなのだけれども、そういう家族の機能を欠いて子どもに安心感をあたえることができない家族が機能不全家族である。そういう我が家も例外ではありませんでした。

幼い子どもはどんなに劣悪な親であろうとも、その親を見限ることができず、ある意味で親を信じきっています。

自分の主張を抑えなければ親の暴力や支配からは逃げられない環境で育った子どもは、基本的な安心感をやしなうことができず、大人になっても絶えず周囲の顔色をうかがう人間になってしまいがちです。

ACは大人になりきれない人というよりは子どもの部分を残している人であり、自尊心が低くて他人の目ばかり気にしている完全主義者が多いようです。

完全主義で他人の目を気にするために、仕事は一生懸命に行うので他人の評価は高いけども自己評価が低く、自分のやっていることはダメだと自信がないひとが多い。

他人にどう見られているとか、どう思われているとかが無限の不安を呼び起こし、いつも他人の顔色を窺がい続けているのです。

「あなたはそのままでいいんだよ」というメッセージを親から受け取ることができないと、自分に自信が持てず、その耐え難い寂しさを埋めようとして、何かに依存しなければならないようになってしまいます。

ACにともなう嗜癖や共依存、家族間葛藤の問題は、DVや虐待のある家族だけでなく、父親は仕事熱心、母親は良妻賢母、子どもは勉強熱心と、三者三様に頑張っている模範的な家族にも発生します。

そのなかにある問題の本質は「支配」でありコントロールなのです。もっとこうあるべきだ、こうすべきだ、と皆を駆り立てる暗黙の掟が、会社から父親へ、父親から母親へ、母親から子どもへ、子どもから弟妹へとつたわり支配と被支配が連鎖していきます。

支配される人は支配する人に苦しみながらも、その関係を抜け出ることは見捨てられたり孤立したりすることにつながるため、お互いに離れられないで共依存を生みます。

ACには①責任を負う子ども、②なだめる子ども、③順応する子ども、という3つのタイプが知られています。

「責任を負う子ども」には、家族の中では第1子がなりがちであり、親の期待や支持を受けて責任をとる立場に身を置き、嫌が言えずになんでも引き受けてしまいます。背負わなくてもよいことまで背負ってしまうので真面目に頑張るのだけれど疲れるのです。

「なだめる子ども」には、親の不和の仲介する立場にいる第2子がなりやすいようです。家族の苦しい状況を打破するために、スケープゴート、ピエロ、ケアテーカー、トラブルメーカーなどを演じ、家族のなかの調整役となります。

「順応する子ども」には、いまだ存在感の少ない第3子がなりやすく、夫婦喧嘩していてもじっと漫画を見ていたり、兄が喧嘩を止めてていても自分の部屋に行ってしまったり、関心はあっても巻き込まれるのが嫌でひたすら自分の世界にこもってしまうのですけれども、心底には緊張感や恐怖を持たざるをえません。

ACには①と②が多く③は少ないと言いますが、実は私はこの③のタイプであり、以前に受けた退行催眠療法では幼児期のそのような場面と思いがいきなり出て来て自分でも驚いたことがあります。

このなかで一番大変なのは「責任を過剰に負うタイプ」であり、言われなくても気がついてなんでもやってしまうので、家族が全部おんぶにだっこになってしまいがちです。嫌が言えず、甘えられず、頼まれたらうれしく思い、ついやりすぎてしまうのです。

ACは、孤立感、極端な自己評価の低さ、愛情と同情の混同、怒りや批判への脅え、自分の感情に気がつき表現する能力の欠如、自己肯定感のなさ、絶望的なまでの愛情と承認の欲求などの特徴をもちやすく、そのなかでも最も本質的なのは「自己承認への欲求」だそうです。

ACは、自分が子どもとして受け入れられることが少なかったことで、自分で自分を受け入れることすらできないで生きていて、「家庭に自分の居場所がない」「自分はこの家族の中で生きていてもよいのか」「この世の中に存在してもよいのだろうか」などの感覚を持っています。

ACは、環境の機能不全を、自己の過剰なまでの適応能力で乗り切ってきた人だといえますが、ACが生き延びれた根底にある力は、瞬時に相手を判断する直観力かもしれないと「AC完全理解」(三五館)の中に信田さよ子さんは書いています。

一方、「ささいなことにもすぐに動揺してしまうあなたへ」(講談社)を書いたユング派のセラピストであるエレイン・N・アーロンさんは、生まれつききわめて敏感な子ども(HSP)は、あらゆるものごとに影響を受けやすく、機能不全家族の中ではいちばん歪みを受けやすく、家族の調整役、殉教者役、患者役、親役などを請け負わされてしまうと述べられており、HSPとACとの関連を示唆しています。

外から見ればたいした問題のない家庭環境であっても、HSPの子どもは他の子どもより余計につらさを感じてしまうので、「この世の中で自分が存在していい」という安心感を感じたいというHSPの子どものニーズは容易に見過ごされてしまいがちです。

子どもは苦しい中でも生き延びるために、親に過剰適応しようとし、自分の感情や意思を抑圧して意識下に封じ込めます。そうやって隠れてしまった意識は、大人になってからストレス性の身体症状などの形になって現れてきます。

また、安心感を得られないままに社会に出て、自分のHSPやACの性質を知らなければ、自分を不安にさせるタイプの人ばかりがその臭いをかぎつけて寄ってくるので、いつまでたっても安心感を得られない生活を繰り返すことになりかねません。